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アニメ『二ノ国』感想|2つの世界と1つの...

アニメ『二ノ国』感想|2つの世界と1つの命

はじめに


本作は、レベルファイブの人気RPG『二ノ国』シリーズを原作とするアニメーション映画です。

監督を務めるのは、スタジオジブリ出身で『屋根裏のラジャー』を手掛けた百瀬義行。製作総指揮・原案・脚本は、シリーズ生みの親であるレベルファイブの日野晃博。アニメーション制作は、『ポケットモンスター』シリーズなどで知られるOLMが担当しています。

高校生のユウとハルは、ある出来事をきっかけに異世界「二ノ国」に転移します。そこで出会った姫・アーシャは、現実世界の幼なじみ・コトナと命を共有する存在でした。やがて二人は、それぞれの世界の運命を左右する大きな展開へと巻き込まれていきます。

2つの世界を行き来する独創的な世界観を軸に描かれる本作は、2019年8月23日に劇場公開されました。

この記事では、ネタバレになる要素を減らすため、あらすじやストーリー展開などは詳しく説明しません。そのため、作品を視聴していないと、理解できない考察なども含まれます。予めご了承ください。

お爺さんの正体


公式で「二ノ国を知る謎の多い老人」と紹介されているお爺さんは、タイトルが出る前の冒頭シーンと、ユウにグラディオンを授ける終盤のシーンに登場します。登場するタイミングや役割を考えても、本作において非常に重要な存在と言えるでしょう。

脚本を務めた日野氏は、インタビューで「ゲーム版をプレーしたユーザーが楽しめる要素はあるか」と問われ、次のように答えています。

冒頭から登場するおじいさんが後半に着ている服など、デザインや設定などで気付くことがあると思います。
出典:エンタメOVO 日野晃博インタビュー

重要人物でありながら、作中ではその正体について詳しく説明されません。そのため、二ノ国シリーズを未プレイの視聴者には、やや置いてきぼりに感じられる演出でもあります。一方で、インタビューでの言及を踏まえると、このお爺さんはシリーズ1作目『二ノ国 漆黒の魔導士』の主人公・オリバーの老後の姿であることが示唆されます。

ただ、このお爺さんの登場が、本作のストーリー構成そのものに大きな意味を持っているとは考え難いため、ゲームをプレイしたユーザーに向けた、ちょっとした遊び心なのでしょう。だからこそ、人物像の掘り下げや、彼が所持していたグラディオンについての説明も、あえて省かれたのかもしれません。

世界と命の繋がり


様々なインタビュー記事で、脚本を務めた日野氏は「久石譲氏からの助言を受け、二ノ国を主軸としたストーリーから、2つの世界を行き来する構成へ変更した」と語っています。

『二ノ国』の最初に作った世界観の面白味って、“2つの世界があってそれが繋がっている”ということなんです。
出典:アニメイトタイムズ 日野晃博インタビュー

日野氏自身も、インタビューの中で「2つの世界の繋がり」を本作の面白さとして挙げています。本作において、「2つの世界の往還」は作品の核となる要素です。さらに、世界を行き来する条件が「命の危機」とされていることからも、「世界」と「命」の繋がりこそが物語の出発点だったことがうかがえます。

この物語が描くのは〈命の選択〉という究極のテーマだ。
出典:映画『二ノ国』公式サイト

一方で、公式サイトや予告では「命の選択」が前面に押し出されています。しかし、視聴後の率直な印象としては、本作は「命の選択」を描くために作られた映画ではないように感じました。

本作の課題は、テーマやメッセージそのものではなく、「2つの世界と1つの命」という魅力的な世界観を、どう物語としてまとめるかにあったのでしょう。改めて振り返ってみても、「1つの命を2人が共有し、それぞれ異なる世界で生きている」という発想はとても魅力的です。

ただ、そこから自然に生まれるはずの葛藤や人間模様までは、十分に掘り下げられていません。「命の選択」というテーマも、物語として成立させるために後から加えられたような印象が拭えず、結果として、世界観の魅力もテーマの一貫性も十分に伝え切れなかったように思います。

ハルとユウの関係性


本作のラストでは、ユウが二ノ国の住人であり、ハルと命を共有する存在だったことが明かされます。世界観と同様に非常に魅力的な展開ではあるものの、かなり唐突に提示されるため、納得感のある驚きとして受け止め難いところがあります。

改めて本作を振り返ってみても、2人の関係性に明確な疑問を残す伏線は、ほとんど見当たりません。終盤の種明かしを踏まえれば伏線と捉えられなくもない、という程度にとどまっており、初見の視聴者を納得させるには少し弱い印象です。

その中で最も綺麗に機能している伏線は、現実世界のユウが足に障害を抱えている点でしょう。

かなり特徴的なキャラクター設定なので、ユウの登場時から、多くの視聴者は自然と「なぜ足が不自由なのか」を考えることになります。作中では、本来いるべきではない世界に長時間滞在すると、「命に危険が及ぶ」と説明されています。そのルールに反して現実世界で暮らしているからこそ、ユウの身体には足の障害という形で制約が現れたのではないでしょうか。

序盤では、ユウが階段を上れない姿がわざわざ強調されます。その後、二ノ国ではその身体的な制約から解放される。この対比は、終盤で明かされるユウの正体を踏まえれば、確かに伏線として機能しています。
さらにラストシーンでは、序盤と同じ階段の演出がもう一度描かれ、今度は二ノ国でユウが階段を上っていく演出も追加されます。序盤の場面と対になる構図を用意することで、伏線回収としての形を整えているようにも見えます。

さいごに


かなり正直に言えば、アニメーション映画としての完成度を考えると、スタジオジブリの名前を借りるには、さすがに失礼ではないかと感じます。

ジブリ作品には、奥行きのある世界観を圧倒的な作り込みで成立させ、視聴者の心を鷲掴みにするものが多くあります。また、誰もが同じテーマやメッセージを受け取るように導くのではなく、ある程度は視聴者の感受性に委ねている印象です。主張も全体的に控えめで、だからこそ観た人それぞれに考える余白が残ります。

そう考えると、本作には、世界観とテーマのどちらを主軸にするのか、その覚悟が少し足りなかったように思います。結果として両方が中途半端になり、「結局、何を描きたかったのだろう」という感想が生まれてしまいます。

個人的には、無理にテーマを強く打ち出すよりも、この世界観だからこそ生まれる人々の営みや葛藤を、もう少し前面に出して欲しかったです。

参考サイト


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