アニメ『超かぐや姫!』感想|ネット文化への熱い賛美
- のろ

- 14 時間前
- 読了時間: 6分

はじめに
本作は、日本最古の物語とされる『竹取物語』を原作に、豪華ボカロPたちが劇中歌を手がけたハイクオリティなエンタメ作品です。
監督は、『呪術廻戦』『チェンソーマン』など、数々の人気アニメのオープニング映像演出を担当してきた山下清悟。
アニメーション制作は、『ペンギン・ハイウェイ』などで知られるスタジオコロリドと、山下監督が代表を務めるスタジオクロマトがタッグを組んで担当しています。
物語は、女子高生・彩葉が、月から来た少女・かぐやと出会うところから始まります。やがて二人は、インターネット上の仮想空間「ツクヨミ」で協力しながらライバー活動を行うようになっていきます。
ネット文化の象徴ともいえる仮想世界を舞台に、かぐや姫としての運命とどう向き合うのかを描いた本作は、2026年1月22日にNetflixで世界独占配信されました。
この記事では、ネタバレになる要素を減らすため、あらすじやストーリー展開などは詳しく説明しません。そのため、作品を視聴していないと、理解できない考察なども含まれます。予めご了承ください。
『竹取物語』との違い
タイトルからもわかる通り、本作は『竹取物語』を原作としています。
かぐやの誕生や帝の求婚、月からの迎えといった主要な出来事は、全体を通して原作に沿った展開になっています。
一方で、作中では『竹取物語』の結末を「バッドエンド」と捉える視点が示され、かぐや自身もその終わり方に納得していない様子を見せます。
この点から、本作は物語の骨格こそ原作を踏襲しつつも、エンディングに前向きな再解釈を加えようとしている意図がうかがえます
本来どうしても悲しくなってしまう「別れが決まっている」という状態(中略)明るいからこそ切ない、そこを描くのが自分の本懐ですし、この作品で絶対に見せたい部分でした。 出典:KAI-YOU 山下清悟監督インタビュー
山下監督のこの発言からもわかるように、本作が描こうとしているのは単なる「別れ」そのものではなく、「別れが決まっている状況を、どう受け止めるのか」という姿勢そのものなのでしょう。
悲劇的な構造を変えるのではなく、その意味づけを変える――そこに本作の核心があるのかもしれません。
「ネット文化」へのこだわり
本作は、公開前から「歌ってみた」動画を広告として採用するなど、ゲーム・配信・仮想現実・アバターといった「ネット文化」への強いこだわりが随所に感じられます。
ちょうどその時期に『ONE PIECE FILM RED』(2022年)が公開されていたんですが、(中略)様々なアーティストを呼べたら面白いんじゃないかと思ったんです。 出典:KAI-YOU 山下清悟監督インタビュー
監督がインタビューで語っている通り、劇中歌には著名なボカロPたちが楽曲提供者として名を連ねています。
その布陣はインターネット黎明期の熱量を想起させる一方で、本作に見られる既視感のあるミュージカル調の演出は、『ONE PIECE FILM RED』からの着想であることもうかがえます。
奥行きがない作品の虚しさ
年単位の時間と膨大なリソースを投じて本作を完成させた制作陣には大変失礼な感想かもしれませんが、正直、本作はこれまで観てきた長編アニメ作品の中でも際立って退屈でした。
山下監督は『呪術廻戦』などのメジャー作品で数多くのオープニング映像を手がけてきたクリエイターです。
『超かぐや姫!』は、「魅せる」のベクトルのほうにぐっと傾いた作品だ。 出典:アニメ!アニメ! 藤津亮太のアニメの門V127回
こうした評価が示す通り、本作の画面演出は非常に洗練されています。
オープニング映像で培われた“瞬間的に惹きつける画づくり”の技術が、本編全体にも色濃く反映されていると言えるでしょう
エフェクトやキャラクター表現など、視覚的な刺激は途切れることなく提示され、画面自体は常に躍動しています。
しかしその一方で、説明的な場面が多く、物語としての余白がほとんど確保されていない印象も否めません。
登場人物の内面を想像し、感情を重ねるための隙間が不足しているため、感情移入が難しく感じられました。
【原文】 This sense of reserve partially comes from a lack of dramatic urgency during the film’s belabored 143-minute runtime, as a general tendency towards comedic reactions and cutesy posturing fails to set the stage for weightier subject matter. 【翻訳】 この抑制された印象は、143分という長尺の映画に劇的な緊迫感が欠けていることに一部起因している。全体的にコメディ的な反応や可愛らしさを強調した演出が主流となる傾向が、より重い主題を扱うための土台を築き切れていないためである。 出典:The A.V. Club 『超かぐや姫!』レビュー
海外の批評でも指摘されている通り、登場人物の感情に十分な共感を抱けないまま物語が進行していくため、クライマックスで提示されるメッセージを受け取るための準備が整っていない印象があります。
制作陣の狙いとして、象徴的なメッセージを表現するよりも、ネット文化のアイコン性や、竹取物語の現代的翻案としての側面を強調した可能性も考えられるでしょう。
ただ、その場合においても、エンディングの裏切りは感情を大きく揺さぶるほどの力を持っているとは言い難く、物語を締めくくる決定打にはなりきれていませんでした。
(早見沙織さんの演技とこのハイレベルな作画であれば、絶対にもっと良い展開にできたはずです。)
少なくとも序盤で「エンディングを改変する」というメタ的な示唆を前面に出すのではなく、より終盤に近い位置で提示する、あるいは控えめに匂わせる構成のほうが効果的だったのではないでしょうか。
今回のエンディングの仕上がりを考えると、期待値を過度に引き上げてしまう伏線だったように感じました。
さいごに
これまで20作品ほど感想記事を書いてきましたが、今回はやや上から目線の論調になってしまったかもしれません。
非常に心苦しくはありますが、それでも表現としては自分なりに抑えたつもりなので、ご容赦いただければ嬉しいです。
もしかすると、単純に私がギャグテイストをあまり好まないことも影響している気もします。
本作をご覧になった方がどのように受け取ったのか、ぜひ意見を聞いてみたいところです。


