安宅和人『イシューからはじめよ』|仕事の効率を劇的に変える思考術
- のろ

- 8月3日
- 読了時間: 5分
更新日:8月8日
はじめに
社会人であれば誰しも一度は、「これって本当にやる意味あるのかな?」と疑問に思うようなタスクを任された経験があるのではないでしょうか。
形だけが残ったルールによって生じる業務は、現在ではもはや本質的な意味を持っていないケースも少なくありません。「ルールだからやる」といった理由で発生するタスクほど、退屈で非生産的なものはないでしょう。
だからこそ、いま自分が関わっている物事の本質を見極めることが求められているのだと思います。
今回は、英治出版から2024年9月に発行された、安宅和人の『イシューからはじめよ』を読んだのでまとめてみました。
イシューとは
イシュー(issue)は、もともと英語で「課題」「問題」「争点」などを意味する言葉です。
本書の中では以下のように定義されています。
「2つ以上の集団の間で決着のついていない問題」であり「根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題」の両方の条件を満たすもの。
つまり、「解くべき本質的な問い」こそがイシューであり、それを解決することで際立った改善や前進が期待できます。
仕事の本質
生産性の高い仕事とは、「イシュー度」と「解の質」という2つの軸の両方が高い場合を指します。
まず、「この問題に答えを出す必要性が高い」と判断できるものは、イシュー度が高いと言えます。
一方で、「そのイシューに対して明確な答えを出せている」と判断できるものは、解の質が高いとされます。

たとえ高品質な解決策を提示できたとしても、それがそもそも解決する必要のない問題であれば、得られる成果はごくわずかです。
だからこそ、最初にやるべきことはイシューを明確にすること。そして、そのイシューに対してどのような解決が適切かという順番で考える必要があります。
なお、イシューとされるべき問題は、立場や状況によって異なって見えることもあります。できるだけ多くの人が「確かに重要だ」と共感できるような問いを選ぶことが大切です。
イシューから考える課題解決プロセス
プロジェクトなどの課題解決において、解を導くまでのプロセスは以下の通りです。
イシューを明確にする
イシューを分解し、サブイシューを洗い出す
各サブイシューに対して仮説を立てる
仮説に基づいてストーリーラインを構築する
ストーリーラインを実証するために、データを収集・分析する
得られた結果をもとに、結論をまとめる
前のセクションでも述べた通り、最も重要なのは、取り組むべき事案においてイシューを明確にすることです。
続いて、サブイシューを洗い出すことで、課題の全体像をより鮮明に把握できます。
仮説を立てる目的は、実証のフェーズにおける比較対象を持つことにあります。課題解決の過程では、データや事実による検証が必ず求められますが、仮説がないと、何をどう評価すればよいか判断がつかず、分析効率も落ちてしまいます。
また、人に何かを理解してもらうには、筋の通ったストーリーが欠かせません。
ストーリーラインは仮説を基に組み立てるため、最初から正確である必要はありません。案件の進行に応じて、適宜、肉付けや修正を加えていくことが大切です。
さらに、それをより説得力のあるものにするには、視覚的なデータの活用が有効です。ストーリーの流れに沿って、適切なデータを収集・分析し、根拠として示すことが求められます。
分析とは
課題解決においてデータの収集と分析は欠かせないプロセスです。しかし、「分析」とは具体的に何をすればよいのでしょうか。
本書では、分析とは「比べること」だとされています。つまり、分析結果とは「比べた結果、違いがあるかどうか」に尽きます。

ここで言う「違い」とは、「差がある」「変化がある」「パターンがある」といった状態を指します。決して難しいことではなく、2つ以上の要素を比較して、どこに違いがあるのかを明らかにするという、シンプルな作業です。
基本的に解を導くプロセスでは、あらかじめ立てた仮説と収集したデータが一致しているかどうかを検証していきます。
そのため、事前に仮説を持っていないと、検証の基準がなくなり、どこに着地すべきか分からなくなる恐れがあります。
「考える」と「悩む」の違い
本書の本筋とは直接関係ありませんが、非常に印象的だった内容のため、ご紹介します。皆さんは、「考える」ことと「悩む」ことの違いについて、考えたことがあるでしょうか。
本書では、両者は以下のように定義されています。
悩む:答えが出ない前提で、考えているフリをすること
考える:答えが出る前提で、建設的に思考を組み立てること
一見ありふれた表現に思えるかもしれませんが、まさに本質を突いた指摘だと感じます。
基本的に、「悩む」という行為にはあまり意味がなく、そこに時間を費やすのは賢明な選択とは言えません。
とはいえ、人は不安を完全に排除して生きることはできないため、悩む時間をゼロにするのも現実的ではありません。
だからこそ、「今、自分は考えているのか、それとも悩んでいるのか」を意識的に区別することが重要です。そして、もし悩んでいると気づいたときは、一度手を止めて、別の行動に切り替えるのが有効な対処法になるでしょう。
さいごに
案件などを任された際に、どのようにして結論にたどり着くかというプロセスが、丁寧かつ分かりやすくまとめられた一冊でした。

他のビジネス書と比べて、概念的な説明にとどまらず、さまざまなチャートを活用して具体的に解説されている点が印象的で、理解が深まったと感じます。そうした構成そのものが、本書で語られている「イシューからはじめよ」の考え方を著者自身が実践している証とも感じ、非常に説得力のある内容でした。


